おいしかったぁ! Mのカレー(^^v


<料理の味は、料理人の意欲に比例する>んでしょうか。

香辛料を一からブレンドして、というような凝り方ではないんですが、ルーの選定にはうるさい人です。

私は、といえば、風邪をひいたときにカレーを食べて咳こんでゲェゲェやって以来(カレーで吐いたら超苦しい)、カレーを作る意欲が著しく減退←軟弱

それで、カレーはすっかりMにオマカセで、カレーを作るというと、Mは腕まくりの感じです。


今夜のカレーは「S&B ケララカレー ※」で、骨つき鶏肉を使って、リンゴとセロリも入れたとか。

商品特徴
インド・ケララ地方の、チキンを使う本格的なカレーです。
フレーク状のルウに、「炒め用スパイス」「煮込み用スパイス」「仕上げ用スパイス」がセットになっており、好みに合わせてスパイスを組み合わせて作る、手作り感覚と、本格的な味わいが楽しめます。化学調味料を使わず、スパイス感、素材感を味わえます。


ご近所に、おいしいカレー専門店があるんですが、そうヒケをとらないっていう感じでありました。

玄米御飯は、カレーによく合うということも実感しました。


食べたあとでブログアップを思い立ったので、カレーの画像がないのです(^o^;)

スパイスフェスタケララカレー97g
 ¥346 e-エスビーフーズ Yahoo!店

なにをイマサラの本2冊。

ここに挙げましたのは、こんな経緯で・・・・・・。


知る人ぞ知るw、『文学賞メッタ斬り』。

一躍、大森望さんと豊崎由美さんを有名にしたこの本ですが、初版からもう3年近く経ってるんですね。

この本を思い出したのは、ほかでもありませぬ。

ネット某所で「今期、直木賞受賞作なしって・・・・・・」という話がありました。

身近な下馬評では北村薫さん、荻原浩さんのどちらかに肩入れ、という感じがしました。


えっと、私ですが・・・・・・、前回の三浦しをんさんと森絵都さんの直木賞受賞は、はいはい!という感じ、その前の絲山明子さんの芥川賞受賞は、やったね!という感じだったりして、最近、予想がイイ線いくなw、なんて思っていたところでありまして、今回は私も意外ぃぃ。


で、某所で、「選考評がドーモ私には・・・・・・・」という方がいらっしゃって、それなら、この本がオススメではないか、と思った次第です。

はい、メッタ斬りですから、メッタメッタに斬っておられます。

気の弱い私なんか、選考委員の資質(--;について、ここまで言うのはエ・ラ・イ!ス・ゴ・イ!と思ったものでございます。だから、売れたのでしょう。あ、この本全体は、選考委員について書かれたものではなく(>当たり前)、下のとおりの本なんですが。

昨年夏には「リターンズ」が出たようですが、こちらは読んでいません。

 大森 望, 豊崎 由美 文学賞メッタ斬り!

出版社/著者からの内容紹介

業界騒然!読書家待望! 小説が100倍楽しくなる痛快文学賞ガイド
文学賞ってなによ? 芥川賞・直木賞から、話題のホラー小説大賞、メフィスト賞、ファンタジーノベル大賞まで、50を越える国内小説賞について、稀代の読書家大森望・豊崎由美の二人がアンタッチャブル徹底討論!
WEBマガジン「エキサイトブックス」で一大センセーションを巻き起こした掟破りの言いたい放題がさらにパワーアップ。
最新受賞作全採点「文学賞の値うち」付き。読む前に、読むべし!


大森 望, 豊崎 由美 文学賞メッタ斬り!リターンズ


ついでといってはナンですが、定評あるベストセラー『作家の値うち』も。

文学賞に照準を合わせているのではなく、作家と作品に照準を合わせているので、類書といえるかどうかわかりませんが、超オススメ。なにしろ、各作家と主要作、スルロイ短評とともに点数表示であります(^^v m(_ _)m (^o^;) 


2冊とも、ある部分、ヒッジョーに痛快。その一方で、ほへぇぇと思ったりもする、気の弱い読書家が赤くなったり青くなったりして?読める一冊(^_^ゞドモドモ


 福田 和也 作家の値うち

向こうからリキが入ったMの声が聞こえた。

「今日は、わたしがいちばん美味しいと思う夕ご飯にするから!」

「わぁ、すごくキタイ!」

自分の部屋から大声で私が返事すると、

「でも、わたしにとっての、だよ」

御意!であります。


新宿さぼてん のコロッケにする(駅前に売店がある)とか言ってたけど、ほかにいったい何を?


しばらくして、「できたよぉぉ!」


というわけで、まいりましたところ・・・・・・。



・コロッケ2ケ、キャベツ添え 

  内緒の声:ご馳走というから、カキフライぐらいついてるのかと思った(x_x)☆\(-_-メ)バキ

・湯豆腐

  内緒の声:Mの湯豆腐はいつも出汁がすくなくって、お豆腐と白菜と葱がてんこ盛りw

・ほうれん草とじゃがいもの味噌汁  

  内緒の声:「白味噌と合わせたから」と自慢げ。

         確かに、いままでのM作の味噌汁のうちで一番おいしゅうございました(^^v


たしかに、ゆっくりと(10年かけて(--;)着実に進歩なさっていますw

今までは、湯豆腐といえば湯豆腐だけのことが多かったような。

それに味噌を合わせたのも、初めてだったかと・・・・・・。

でも、Mのご馳走の条件は玄米じゃなくて、やっぱり白米みたいですね。


湯豆腐が少ししか写っていませんが、一応、証拠の?画像です(^_^ゞドモドモ


yuusyoku

不二家のケーキを食べなくなってから、何十年になるだろ。

小さい頃の誕生日とクリスマスのケーキは、不二家のショートケーキだった。

当時はフランチャイズ以前で県下には不二家なんぞなかったのでw、父が大阪から買って帰ってくるという習慣だったが、それはそれはおいしかった。


不二家の思い出はもうひとつ。

十数年前のことですが、オーストリーとフランスで修行していらっしゃったパティシェに聞いたことがあります。

「創業から20年くらい(?)までの不二家は、洋行帰りのパティシェががんばっていて、一流中の一流だったんですよ」と。


妙な比較かもしれませんが、モロゾフの経営は安定しているようですね(株価参照しました 爆)。

フランチャイズは、不二家をはじめ洋菓子の場合、凶とでてしまった様子。いろいろ理由はあるんでしょうけど、「ケーキ=生もの」のフランチャイズは方向が違ったのかもしれないなと思ったりします。


最近はとんとご無沙汰でしたが、個人的には雪印のときより心中フクザツです。

1月6日の<にらみそ@オレンジページ「冬おかず」 >の最後に、こんなことを書きました。

つぎは、「れんこんのかば焼き風」だな。

コレステロール値が高いMのために???

いつかテレビで見た、うなぎの蒲焼きに似た味になる野菜料理は、これだったのではないか、という興味から???

作ったら、報告します(^_^ゞドモドモ


それで・・・・・・やってみました、懸案の「れんこんの蒲焼き風」(^^v

問題は、「うなぎの蒲焼きに似た味」であるかどうか、なんですが・・・・・・、ずばり、違いました!(x_x)☆\(-_-メ)バキ


レンコンをすりおろした時点で、うっ、これは違うのではないか、と思いました(^_^ゞドモドモ

形に作った時点で、む、五平餅みたいな感じだ、と思いました(^o^;) 

料理上手な人なら最初から見当がつくのではないか、と(;¬_¬)


それで、食べてみましたら・・・・・・、磯辺餅のような食感と味。磯辺餅より風味(としかいえない)がありますが、レンコン独特のしゃきしゃき感はほとんどありません。←そりゃ、すりおろすもん

いわんや、鰻の蒲焼においてをや、をやをやヾ(ーー )をい!


そういえば、お好み焼きをおいしく作るには、とろろ芋をすって入れますけど、代用にジャガイモも可と聞いて実行してみたことがあります。代用は代用ですが入れないよりはずっとよい、と言う感じに仕上がりました。

ジャガイモをすって片栗粉をちょっとまぜて焼く「おやき」というのもあるらしいですが、この一品はそれに近い感じなのかもしれません。



ということで、私の料理に関する記憶は、実にまったくアテにならない(>ほかの記憶は大丈夫なのか???)ということが判明しました。

いつかテレビで見たんです、野菜を使って、肉や魚のような味になるいろんな料理(凝った精進料理)を。そのとき、鰻の蒲焼をなにかの野菜で作っていたと思います。いったい、あの野菜はなんだったんだろう。ご存知の方がいらっしゃったら、教えてくださいませm(_ _)m


といっても、鰻が大好物というわけではないのです、わたし(x_x)☆\(-_-メ)バキ

超おいしい鰻の蒲焼、ならびに鰻茶(鰻の佃煮の茶漬け)は好きですがヾ(ーー )をい!

すべては、コレステロール値が高いMのため・・・・・・なぁんちゃって(^O^)


そうそう、コレステロール値って、お薬でイッパツなんですね。

一年間、食事療法をしたのに効果がなくて、一ヵ月お薬を服用したら平常値になったみたいです。


と、話がどんどんそれましたが、せっかくですから、レシピと自作を下に。

鰻云々を抜きにして、料理としては万人に受け入れられるw、結構いける味だと思いました。


resipi


←レシピはコレ。クリックすると大きくなります。





↓あまり見せたくないがw、自作


renkon




今夜、「風林火山 」を初めて見た。

意外に(x_x)☆\(-_-メ)バキ、面白かった!


武田・上杉、川中島、風林火山って、映画やテレビでお馴染みのテーマすぎて、なにをいまさら、という感じがしていたのですが(「赤穂浪士」ほどじゃありませんけどw)、よく考えれば、それはわたしがオバサンだからなのよね(^o^;)

いったい何作見たことがあるか、いまとなっては定かではないのですが、有名なところでは、山本勘助をやってる三船(映画「風林火山 」)とか、上杉謙信をやってる石坂浩二(大河ドラマ「天と地と」)とかの記憶はある。井上靖の原作は読んでいないけど、ほかにも、この題材のものをちらちら見てるはず。

風林火山   
それで、いままで見たなかで、今夜の「風林火山」が一番よいぞ、と思った。
そう思ったのは、オバサンである私が次第に男性化(--;しているせいかもしれない。
あるいは、勘助の心情によく添えるぐらい大人になったということなのかもしれない(遅いかw)。
それくらい、かつて、このテーマの作品は、わたしにとって遠い感じがした。

といっても、(当たり前のことだけど)脚本はもちろん、役者や大道具、加えてわたしの場合は衣裳もw、見る気にさせてくれるものじゃないとこういう気分になれないから、一般的にいってもかなりいいデキなんじゃないかな、と。


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仲代達矢の武田信寅の演技に、10年あまり前、シェイクスピア劇場で見た「リチャード三世」が重なった。好きだなぁ、この人のこういう役。はまり役すぎるなんて、けったいな贅沢は絶対にいわない。

千葉真一は、「キル・ビル」のときより、やっぱりはるかによいぞ。というか、私が知ってるいままでの出演作(それほど知らないんだが)の中で一番いいな。


ところで、主役の山本勘助をやってる内野聖陽という俳優を初めて見た・・・・・・って、バカバカ>わたし・・・・・・wikiで見たら「蝉しぐれ」に出てるみたいじゃないか。えっ?・・・・・・やっぱり、バカバカ・・・・・・わたしが見たのは、テレビじゃなく映画でした(^_^ゞドモドモ

ということで、初見のこの人ですが、よいですね。若手俳優というよか、骨太な役者さんつう感じがして。


とこっろでw、マイブームは第何次かの橋本治であるのでw、『乱世を生きる 市場原理は嘘かもしれない 』が未読だったなと思った。この本は、『上司は思いつきでものを言う 』(超おもろかった)に連なる新書らしくて、戦国時代とはなんの関係もないようだが、乱世にはやっぱり「風林火山」がよく似合うのだなと、短絡極まりないつうか、思い込みの激しいことを思った。

乱世を生きる 市場原理は嘘かもしれない
 上司は思いつきでものを言う

ひとつひとつちゃんと感想を書く時間がないけど、とにかく読んだ本と短いコメントだけは書いておこう。

小説  『愛の矢車草』『愛の帆掛舟』『S&Gグレイテスト・ヒッツ+1』
好みが分かれるんだろうなぁ、この「愛」のシリーズ。ほんとは、『鞦韆(ぶらんこ)』というのがもう1冊あって4冊が「愛のシリーズ」らしい。それも買ったが、エロ本の態を狙って書かれた小説であった。エロ本じゃなくって官能小説だったら読むんだけどなぁ(と言いながら、読まないことはなかったが)。
すぁて、この「ヘンな愛」シリーズ(^^v わたくし、一番しみじみと感動いたしましたのは、『愛の矢車草』レスビアンのトラック運転手と恋に走ったフツーの主婦を描いた「愛の牡丹雪」でありました。ああ、いっぱい書きたい、でも、パス。それから、『S&Gグレイテスト・ヒッツ+1』の「ボクサー」。こっちは祖母を殺してしまう少年が主人公。文庫本になったのは昨年だが、80年代に書かれた小説。
当然のことながら(^^v、あとがきがまた面白い。

愛の矢車草―橋本治短篇小説コレクション
内容(「BOOK」データベースより)
世の中にはいろんな「ヘンな愛」があふれている―予備校生の隠れた生態を目撃した女子大生たち、改悛の情いささかもないパンティ泥棒の言い分、レスビアンのトラック運転手と恋に走ったフツーの主婦、気がついたら一児の父になっていた小学生…鬼才橋本治が昭和の終わりから平成にかけて書きつづった「ヘンな」愛の短篇コレクション第一弾。

愛の帆掛舟―橋本治短篇小説コレクション
内容(「BOOK」データベースより)
相続問題をきっかけとして嫁と舅の間に生まれた愛を描いた表題作をはじめとして、金持ちの息子とゲイボーイの愛の結末を描く「愛の百萬弗」、堅い銀行員の夫の意外な愛人「愛のハンカチーフ」ほか―白日の下にさらされる衝撃的な愛の裏事情四篇。各篇に田中靖夫、宇治晶、東恩納裕一、山本容子各氏の挿画入り。

 S&Gグレイテスト・ヒッツ+1―橋本治短篇小説コレクション

内容(「BOOK」データベースより)
誰かを好きだと言ってしまいたくて、誰かを嫌いだと言ってしまいたくて、でも、それがとても恐いことを招きよせてしまうような気がして―。甘えと優しさが毀れると、その向こう側には闇と憎悪がぽっかり口をあけている。サイモンとガーファンクルの名曲にのせて、80年代の「青春」の重さを描く15の物語。



B 評論(といっていいのか?) 『人はなぜ「美しい」がわかるのか 』『このストレスな社会!』

『人はなぜ「美しい」がわかるのか 』は、読もうと思いながらそのままになっていた本。下の説明にあるように、このタイトルで人生論なのだ。橋本の「なぜ・・・」というタイトル(いまは他にもあるけど、この人が最初だよね)に弱いっす、そしてかつて『青空人生相談所』に、こんな人が世の中にいるのかと驚いたわたし(つまり、かなりなファンということっす)としては、この本もなぁんともようございましたね。

『このストレスな社会!』は、アマゾンに解説がなかったので、下に書きました。この2年あまりは、こんなトンデモナイ事件が押し寄せた年月だったのだ、としみじみ思った。マスコミも関係者も一般人も右往左往するリアルタイムに、こう解くのか!この問題の本質をこう考えるのかと、いまさらいまさらではあるが、絶賛してしまふのでありまふ。



人はなぜ「美しい」がわかるのか

内容(「BOOK」データベースより)
人はなぜ、「美しい」ということがわかるのだろうか?自然を見て、人の立ち居振舞いを見て、それをなぜ「美しい」と感じるのだろうか?脳科学、発達心理学、美術史学など各種の学問的アプローチはさまざまに試みられるであろう。だが、もっと単純に、人として生きる生活レベルから「審美学」に斬り込むことはできないだろうか?源氏物語はじめ多くの日本の古典文学に、また日本美術に造詣の深い、活字の鉄人による「美」をめぐる人生論。


このストレスな社会!
アマゾンで星5つなのに、上のような説明がない・・・ので、書く。
「広告批評」に10年間連載されている「ああでもなく、こうでもなく」の約2年半分(2004年5・6月合併号~2006年11月号)、この期間の世の中の移り変わりを見つめた時評記録。ライブドア騒動やイラク戦争、姉歯、小泉解散、階層社会、皇位継承問題etc.・・・・・・がっつりと重いぞ。重いが(いや、「重いから」か)、面白いぞ。読み始めたら、バテるまで本を置けなかったっす。そして、ちょっとうたた寝をして起きてまた読みふける・・・・・・。この本にある橋本のライフスタイルを真似てみました(仕事で今日からそれをやるように!!!)

 いったいこの人はどうしたいのだ? 労働相談のつもりで希望を聞いていたが、わけがわからない。はぐらかしているのではなさそうだ。もったいぶっているわけでもないんだろう。隆志は、女の言葉を反芻してみた。

(そうしたいと思ったときは、そうするのが普通)

 それなら、自分はどうしたいと思っているんだろう。自分はどうしたいのか? どちらでもいい、という気がした。それから、また会ってみてもいいんじゃないか、という気持ちになった。しかし、小山さんは主婦だ。主婦で母親だ。主婦で母親である女性は、男性と二人で会って話すのが禁じられているというわけではないにしろ、わざわざ二人だけで会う必要もない。小山さんのメールの情熱には驚いたが、こうして会ってみると、それほど非常識な人には見えない。しかし、二人だけで会って何を話すというのだ。いまだって、小山さんは積極的に話そうとしていない。あの掲示板の話題もタブーとでもいうふうに避けている。この人とネットコミュニティ論をやると面白そうだと思ったこともあったが、時間を割いてまで会う必要はない。大事な時を迎えようとしている自分にとって、優先順位は低い。質問は、やはりこうなる。

「それで、小山さんは私とまた会いたいと思っているんですか」

 小山さんはほんの少しの時間、考えていた。

「たぶん、そうだと思います」

 その口調が率直な感じで、隆志は久しぶりにいい気分になった。

「じゃあ、会いましょう」

 即座に答えてから、こういう結論になって、ほっとしている自分を感じた。一緒にいて不愉快な女性ではないと思った。ひっつめ髪にタイトスカートの一世代前のキャリア風ファッションをやめてカジュアルな服装にしたら、小山さんはもっと魅力的になるだろう。

隣に座った小山さんを見たら、それほど楽しそうな表情をしていなかった。女という人種はやはりよくわからない。

今度はいつ会いますか、と尋ねると、またご連絡します、と、小山さんは言う。ときどき会って、こうして話したり映画を見たりする、そんな相手がいることは悪くないと思った。それでこの人の気が済むなら、ご主人やお子さんに対して後ろめたく思う必要はないのではないか。

隆志は自分の欺瞞に気が付かなかった。

「じゃあ。今日はどうも」

 と、その人がビールの入ったグラスを軽くあげた。乾杯のつもりらしい。グラスを合わせようとしなかったので、玲子はほっとした。

 さっきからカウンターの中にいるバーテンダーが、遠くからチラチラ見ている。玲子はその視線が気になって仕方がなかった。玲子の右隣に腰掛けたその人の欠けた前歯はもう見えなかったし、気取った店でもなかったが、やはり玲子たちは不似合いなカップルに写っているのだろう。久しぶりに出会った同級生なら、もっと親しげだ。あの男があの女をナンパしたようには見えない。その逆の可能性もなさそうだ。互いにそれほど好意をもっているようにも見えないが、いったいどういう関係なのか。

玲子は、バーテンが遠くからそんな眼でこちらを眺めているように思えて仕方がなかった。

ビールを飲みながらその男は、饒舌になっていた。

「復帰しませんか、あそこならきちんとした教育問題の話ができると思います」

「その気はありません」

「どうしてですか」

「たくさんの人と、それほど話したいと思わないんです。誰かと争って陣地取りのようなこともしたくないし」

 陣地取りがあるようなコミュニティから、玲子はいつも遠ざかって生きてきた。寿退社で会社は辞めたが、男たちの権力争い、女たちのお局争い、そういう生々しく愚かなものを見聞きしたくなかったからだ。気位が高いのか、ひ弱なのか。どちらでもあるのかもしれない。

 隣に座っている男は「陣地取りのようなことはしたくない」という言葉だけで、玲子の言いたいことがわかったようだった。

「そうですか。じゃあ、どこか別のところへ書き込めばいい。そこでオフ会があれば、私も参加しましょう」

「どうして、そういうことをする必要があるんですか。学生でもないのにサークル活動や合コンをするつもりはありません。会って話したければ、二人で会えばいいことだと思いますが」

 言ってしまってから、玲子は自分で驚いた。この人と二人だけでまた会いたい、と、いま、私は言ったのだ、と。この人と? ヨレヨレのジーンズに、袖口のほころびたアクリルのセーター、前歯が半分欠けて黒くなったこの男と? それに二人の会話は、全くはずんでいない。違うことは違うときっぱりと言い、ギャグやジョークを応酬したあの呼吸はネットの中だけのことだったんだろうか。

「二人で会うんですか」

 男が言った。戸惑っている。

「もし、そうしたいと思ったときは、そうするのが普通じゃないでしょうか」

 玲子は前言をなんとか一般論にできたことに、ほっとした。玲子はもう一度考える、私はこの人と二人だけでまた会いたいと思っているんだろうか。


 映画館で、その人・・・小山玲子さん・・・は背筋を伸ばしてぎくしゃく座った。隆志にもその緊張が伝染してしまったようだ。こうして女性と二人で映画を見たのは、いったいどれくらい前のことなのか、思い出せない。手を握ったり怪しい振る舞いに及ぶつもりがないことを態度で示して、隆志は両手を重ねて小山さんから遠い左膝に置いた。

 甘くもなくドラマティックでもなく、淡々とした映画にも名作と凡作がある。この映画は後者だな、と隆志は思う。時間の関係で仕方がなかったとはいえ、普通なら見ない映画だ。
「つまらない映画でしたね」
 映画館を出て最初に言った小山さんの言葉は、その責任が隆志にあるとでもいうような口ぶりで、勝手な女だ、と隆志は心の中で苦笑した。
「家族そろって死の床にいる叔母を愛情深く看取るなんていうシチュエーションが、いまどきアメリカ映画になってるとは思わなかったですね」
 さらに、毒を含んだ言葉を吐いた、ただし今度は映画そのものに対して。目の前の小山さんがネットでの姿に少し近づいた。
「このあと、どうしますか? 夕食は、食べて帰ってもいいんですか」
「ええ、今日は外で済ませてくるって置手紙してきました。なにかあったら、携帯に電話がかかってくることになっています」
「じゃあ、食べましょうか。すごくお腹がすいていますか?」
「いいえ、それが、あまりすいていないんです」
 隆志は食事もできるビアバーに誘った。