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牡丹に蝶をあしらったパンフ表紙。イヤミなく金色が使われていて、なかなかステキ。

モダンな感じがするかもしれませんが、花の部分は名物裂( )の一重蔓牡丹( )をアレンジしたものでしょう。



ありえねぇ~~!が50回ぐらい(x_x)☆\(-_-メ)バキ
だけど、「東映は元気だ! よかった!」を実感した映画です。


超長文、すみません←先に謝っときます。



前置きの①
「大奥」がテレビで始まった頃、少し見て、わしゃ見ない!と思ったドラマでした。
私にとってはストーリー以前の問題でした。若い女優さんが素顔(のような薄化粧?)で演じたのも話題になっていましたが、将軍の夫人や奥女中が真昼間に素顔でいるわけがない(べったり塗れとはいわないが)。
それに!衣裳が全体的に色調が暗く、金色はじめ各色とその模様がイカニモ安・・・で、ああ、時代劇はこういうふうになってしまったか、といまさらながら_| ̄|○でした。
エンタメ志向の強い時代劇ならストーリーはありえね~!の連続であるのはもとより承知、だからせめて周辺をそれらしくしてもらわないと、私は楽しめませんのです。
嘘をつくなら周辺をできるかぎりそれらしくって、フィクションの基本じゃありません?



前置きの②
わたしが、やっぱり見ようと思った理由。
暮れのテレビドラマが初期の印象よりずっとよかった。
映画の予告編をちらちら見ていると、衣裳が初期テレビドラマとは全然違う。これはイケルのではないか、と思った。
決め手は、この映画が「絵島生島事件( )」を題材にしている、と知ったから(遅い!だって見ないと決めてたw)。実際にあった大スキャンダルのこの事件、わけても絵島に惹かれ、ずっと昔w、絵島が蟄居した信州・高遠の屋敷にも行ったことがありました。去年、連句で捌きをさせていただいていたとき、<炭果てるまで絵島帰らず>という句が出て、前後を顧みず(x_x)☆\(-_-メ)バキ、この句をいただきました。史実は、朝帰りなんかじゃなくて門限に遅れたということのようですが。


前置きの③
友人夫妻は過日、「大奥」を見たそうだ。
夫さん曰く、
「右に中年夫婦の奥さん、左に自分の奥さんが座っていて、途中から右がハンカチ持ち~の、ぐじゅぐじゅ鼻をすすり~ので大泣き、終わりの頃は左も泣き、真ん中の私はなぜ泣くのか理解できず」だったのだそう。それで、私が今週見るとブログに書いたら、こんなお題が出ました。
<「大奥」を観たら、女はなぜ、どこで泣くのか分析してくれない?>
鋭意、努力いたしませう。


さて、本題です。
「ありえね~!ベスト50」(^o^;)のうち、三つだけ面白そうなものを突っ込んでみます。

同時に「前置き③」の課題にも答えられるかな。


ベスト1
敵方w天英院(高島礼子)の後方左右に控えている、赤い振袖の若い娘。
こ、こ、この構図は、どうみても花魁(おいらん)と禿(ハゲじゃなくてカムロと読んでね。花魁見習いの少女です)でございますぅぅ。
歌舞伎でも邦画でも、赤い無地の振袖を着て左右に控える少女のその中心にいる人は花魁と決まっているのでございます。舞踊では禿が一人で踊る有名な曲もあり、この赤い無地の振袖だけで禿とわかる人はわかる、そういう非常に記号化された衣裳なのでございます。
よりによって出家した大奥の未亡人と御付きの女中を、なぜ花魁と禿の構図に・・・?(テン・テン・テン、眼がテン)。シュールでございまぁす(太った奥女中の「美味でございまぁす」は超おもろい)。

だけど、深い意味はなかったりするんだろうなぁ。出家の女性の衣裳は地味だから、まわりで華やかに、というような気配りであったりするのではないだろうか。


ベスト2
月光院(将軍家継・7歳の生母、主人公絵島が仕える主人)と幕府の実権をにぎる側用人( )間部(及川光博)は不義(=不倫)をしていて、敵方の動きを察知した間部は、大奥に行くのをやめる(あれ? 幼い将軍の付き添いということでも側用人は大奥に行けたんだっけ? 「将軍以外は男子禁制」のはずですが)。
月光院は恋患いで床に伏し、ある夜、部屋を抜け出しお鈴の廊下の先にある鍵(金色のおっきな南京錠>わかりやすい。爆)をこじあけて、大奥から中奥へ。と、おりしも間部が中奥の廊下を歩いていて、月光院はすがりつく。

これでは、誰だってありえね~!とお思いになるのでは。
・寝所の控えの間(部屋)には、夜中だってなんの最中(>こら)だって必ず奥女中が控えているのでは?
・なが~い廊下を走って鍵をガチャガチャいわせる間、一人も人に会わないって、そんなぁ(ま、いいか)
・丑三刻みたいな夜中の中奥の廊下をどうして側用人が歩いているんだよぉ。
というようなことを楽しく突っ込んでいると、そこで女性の嗚咽の声が遠くから聞こえてきました。
ああ、やっぱりね、とも思いましたのん。
と申しますのは、この映画のキャッチは「そこは女の牢獄・・・」でありますが(「大奥」ものとしての新しい視点? 昔は女の権力争いだけをクローズアップしてた?)、それをいちばんよく象徴したシーンですね。

このシーンで泣いた人は一度はかなり強く家庭を捨てたいと思ったことがある、というのがわたしの邪推。一度も離婚したいとか家庭を捨てたいと思ったことがない主婦というのは稀有な存在でありましょうから、その程度によっては嗚咽になるのではないかと思われます。←前置き③へのご返事


ベスト3

絵島が歌舞伎見物している最中に、その劇場(山村座)が火事。火事の原因は極端だが、なかなか複雑な女心がよくでてる(長くなるので割愛しよう)。それはともかく、奥女中の歌舞伎見物のときに火事にするというこのダイタンなアレンジ(--; そして、絵島と生島は手をとりあって、お祭りの中を逃げるのです。
そ、そ、そりゃ、火事もお祭りも江戸の名物ではありましょうが、こんなにいっぺんに盛り上げて、いったいなにをする気だ、とはいうまでもありませんw。一夜の恋につっぱしるわけでございますね。
世話物(
)の王道、「道行」( 意味は(4))現代バージョン、やっぱり出ましたか、と思いながら、このありえね~!設定ににやにやしていたわたし、あらららら、人ごみの中を手をつないで走っている俯瞰のカットで、ふいに、じぃんときちまった(^_^ゞオハズカシイ 
さて、ここでじぃんとなる人は、しがらみを全てふりきって二人だけの世界へ、という行動に憧れる人とか、ま、そのぉ。ほとんどの女性はここでじぃんとくる傾向あると思うよぉん。

ヨーロッパ近代のロマン主義小説と日本の近世の世話物の中の「道行」では日本のほうが過激だけど、根本は同じなんじゃないか。だから、西洋風の恋愛に憧れる人にも受けると思う。そいで、そういう行動に憧れる人は、しがらみだとか抑圧だとかを肌で感じてる人なのかな、親や夫のもとから、この抑圧的な社会からなんつう感じで?


次に、左右の女性が泣いたラストシーンですが、そりゃあ、泣くとかうるうるしちゃうのではないでしょか。わたしも、はいはい泣かせたいところね、とわかりつつ、うるうるしました。
この映画の生島は性悪なホストみたいな感じで、私は好みじゃない(そういう問題か)。人の性格はそう変わらないと思うし、とくに映画では善転wする役柄は善なる部分をわずかに見えるようにしておかないと、観客を納得させられないと思うのだが、この映画はくずれた男が変わったということが十分納得できて、それが深い感動に変わるような話の展開、あるいは人物にはなってなかったように思います。それでも、私はうるうるしたのでありますね。う~む、なんでなんでしょ? 

そういうシーンでは、映画の生島じゃなく、もし自分の愛する男がこうなったら、という方向に心が動いてしまいやすいのだと思います(多くの場合、男性よりも強く?)。あるいは、ちょっと崩れた男が好きな女性は意外に多いのかも。そういう人にとっては、男が私を愛して変わった、なんていうシチュエーションは最高なのでは(わたしゃ、うぬぼれ屋じゃないので、そんな厚かましいことは考えない)。仲間由起恵の絵島とかぎりなく自分のもつ心性がシンクロして、まう泣けて泣けて仕方ない場面なのかもしれません。


はい、では、衣裳、まいります!
ようございました。3年ほど前に見たテレビドラマとは全然違う(その後は傾向が変わったようですが?)
打掛に唐織(からおり )が多くて、色使いも本格派。
これは錦織か金襴で、あれは唐織であるな、なんてチェックしながら見るのはとっても楽しかった。
武士の裃とか長着も、能役者あがりの間部の衣裳はうまくアレンジし、大目付や老中のほうは、きちんと裃(かみしも)柄と熨斗目(
 意味の(2))模様でしたねぇぇ。
なんてことを書くのは、この種(文芸物は別)の時代劇の衣裳に絶望とあきらめ(爆)を感じてたからです。

エンドロールで、衣裳協力先を確認しました。
秀吉の「鳥獣文様陣羽織」(
)やねねの打掛( )を復元した「山口美術織物」が筆頭にあって、なるほど、と納得。

以下、衣裳関係、めっちゃ省略。


長いついでに、ユルシテ! 

「山村座」で絵島が歌舞伎見物するシーンが二度あって、一度は生島新五郎が「保名(やすな) 」を踊ってました。この曲が作曲・上演されたのは絵島事件から約80年後だとか、しょうもないことをいうつもりはなく、そっかぁ、「男の恋狂い」がテーマのこの舞にしたのかぁ、と、にやりとしましたです。二度目は絵島の側に生島がいて、舞台の上では「娘道成寺」でした。こっちは「女の恋狂い」ですねw 

そういう意味ではわかりやすく凝ってるんですが、ここ、わかる人、少ないでしょうね(--;

ただ・・・あの・・・、かなり練習はされたと思うのですが(テレビでよく見る劇中劇の舞踊よりは、はるかに)、やっぱり限界があります。


ながくなりすぎたので、その他、いろいろございますが割愛(^_^ゞドモドモ

なんやかや言っても、すごく東映の時代劇らしいです。

これぞ大衆時代劇! だけんど(だから?)超豪華に! っていうところを、わたしは愛しております。

勃興期の歌舞伎も、こういう感じだったんじゃないかなぁ、なんて。


とにかく、東映が元気でよかった!!! 
ひょっとして、わたしは、そのことに一番感激したかもしんない(x_x)☆\(-_-メ)バキ
松竹も、大映なきあとの角川映画もガンバレ!!! とくに時代劇w


最後までお読みくださって、感謝いたしますm(_ _)m